第90章

大島莉理が電話に出ると、田中尚哉の声が耳に飛び込んできた。

「莉理、いまどこにいる?」

どうして急にそんなことを。大島莉理は一瞬ためらい、半分だけ本当のことを口にした。

「会社の命令で出張」

「送ったメッセ、なんで返さない?」

「ずっと仕事でバタバタしてた」

田中尚哉は間髪入れずに返す。

「ほんとに? 仕事が忙しいだけで、俺のこと無視してるわけじゃない?」

大島莉理はどこか上の空のまま、同じ言葉を繰り返した。

「……仕事が忙しいの」

「出張、ひとり?」

警戒が胸を刺す。そんな聞き方――まさか、田中辰哉と一緒だと知っている?

「それ、聞いてどうするの?」

「心配だから...

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